イギリスの人事プロフェッショナル団体であるCIPDが今年発表した調査によると、イギリスで部下が上司に最も求めているものは、公平さ(fairness)と率直さ(open and honest)です。日本人が普段職場であまり深く考えないであろう、この2つがトップに来たことに驚きを感じるかもしれません。
<上司に求める言動>
- 公平であること(32%)
- 率直で本音を話すこと(29%)
- 仕事をするためのリソースを確保してくれる(23%)
- 問題があった時にサポートしてくれる(22%)
- 私に何を期待しているか明確にする(20%)
- 良い仕事をした時に認知してくれる(19%)
イギリスにおける公平さとは、全員共通のルールに従って物事を判断・遂行し、全員に平等に機会を与えることです(機会平等であり、結果平等ではありません)。具体的には:
- 特定の人を特別扱いしない
- 年齢、性転換、結婚や市民パートナーシップをしていること、妊娠または子供がいること、障害、人種や国籍、宗教や信条、性別、性的指向に関して差別しない
- 業績の良い人を認知する、業績の悪い人を対処する、部下個人の功績やアイディアをその個人のものとして認める、昇進の透明性を確保する
英国と日本における公平さで特に異なると私が感じるのは、日本ではまだまだ「年齢が高い=経験がある」と無意識に考えてしまいがちなことです。日本の伝統的な年功序列制度のもとでは、社員はキャリア初期には年齢(または年齢と相関がある勤続年数)で評価され、人事部が(本人ではなく)長年に亘りその個人の業績を大体把握していれば、後年の選抜に十分です。そのため、日本における業績評価は形式上のものであることも多いようです。しかしイギリスでは、公平さの観点から、上司が部下の業績を評価し、定期的かつ頻繁なフィードバックをすることが求められています。
率直さとは、自分の考え、情報、フィードバックを部下に明確にそしてオープンに伝えることです。日本では、上司と部下の上下関係が強調されることや、ネガティブな情報を伝えることを極端に避けたがること、言葉で必ずしも具体的にフィードバックしないことなどがあり、上司が情報を抱え込んだり、部下は上司が実際のところ何を考えているのかわからないといったことが起きやすいかもしれません。イギリスの日本人上司は、意識して言葉で伝え、建設的なフィードバックを与えるよう努めることが大切です。
非日本人から「どうやら日本人駐在員が夜遅くまで残業している時に、物事が話し合われ、決まるようだ」と聞いたことがあります。公平で率直な上司と見られるためには、このような受け止められ方を避ける必要があるでしょう。